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知夫最強のジオ名勝?! 赤壁を深掘れ!

2022/8/26

こんにちは。今週の担当はまぎーです。みなさん、ちぶり島公式noteをお読み頂きありがとうございます!

今回は、世界的リゾート地と隠岐島前のジオ的な共通点をご紹介した前回の担当記事(の反省…)を受けて、知夫里島が誇るジオスポットに焦点を当てた記事をお送りしたいと思います。

お題はこちら!

「知夫最強のジオ名勝 赤壁を深掘れ!」

それでは、我らがレッドクリフにみなさんをご案内しましょう。


隠岐島前の成り立ち

本題に入る前にちょっと前回記事からのおさらいをさせて下さい。隠岐島前の成り立ちは、

①    約640万年前~560万年前
:海底火山(島前火山)の断続的な噴火活動により、それまで浅い海中にあった火山が海面上まで成長。

②    約560万年前~540万年前
:陥没によって島前カルデラが形成され、外輪山の内側から新しい火山(中央火口丘)として焼火山が誕生。

③    ~現在
:焼火山の他にも、その周辺で中小規模のいくつもの火山が活動した後に、やがて全体の火山活動が停止し、風化、海食、海進(海面上昇)を受けて現在の姿に。

このような流れでした。

岩盤の断面図である知夫里島の赤壁を眺めることによって、名勝としての美しさを愛でるだけでなく、数百年前から現在に至るまで、まさに“ここ”で起こってきたこの①②③のステップ、いわばジオの歴史とロマンを、一挙に伺い知ることができるのです。

知夫赤壁とは

ではマニアックな話に入る前に(…もう入ってるって?笑)、赤壁についてレジャー目線でご紹介いたします。

赤壁(せきへき、古くはあかかべとも)は知夫が誇る絶景スポットの一つで、国の名勝天然記念物に指定されています。そのロケーションは知夫里島の西海岸のやや南寄りに位置していて、島の玄関口来居港(くりいこう)からのアクセスは、

【最寄りの駐車場まで】
 ・車で20分
 ・e-bike(電動アシスト付き自転車)なら30~40分
【現地まで遊歩道で】
 ・徒歩5分

ほどになります。

もし来居港に到着してから真っすぐ向かえば、1時間以内に対面することが出来る絶景です!(…運よく牛さんたちの通せんぼに遭わなければ、の話ですが)

規模感としては、海面からの高さ50~200mのアップダウンある断崖絶壁1kmほど連続しているスケールを持ちます。

陸から見れば、(みなさんの良心に委ねられ)柵の設けられていない、絶体絶命の断崖絶壁を楽しめますし、

海から見れば、到底視界に収まらない、圧倒的にワイドな没入感に飲み込まれることでしょう。


赤壁に刻まれたジオの歴史

さて、この辺りで本題です。赤壁を彩る鮮やかな“”に着目して、部分ごとに成り立ちを解説してみたいと思います。

こちらをどうぞ!(拙いペイント、ご容赦ください…!)

今回は大雑把に、

赤で囲った部分…(A)
水色で囲った部分…(B)
その他…(C)

の3つの部分に分けてみたいと思います。それぞれについて詳しく見ていくと、

(A)⇒鮮やかな赤色縞模様が特徴【別名:龍宮乙姫の赤帯】
(B)⇒白さ(明るい乳白色)が特徴【別名:龍騰り】
(C)⇒に近いグレーの岩石が特徴

このような特徴が見て取れることでしょう。

隠岐島前の一部であり、島前火山という一つの大きな火山の外輪山である知夫里島はもちろん、その陸地の多くを火山由来の岩石が占めます。

例にもれず、(A)(B)(C)もすべて、火山が産み出した岩石で、仲間分けすると、

(A)と(C) ⇒ 玄武岩(粗面玄武岩)
(B)     ⇒ 粗面岩 ※そめんがん

このようになります。

驚くことに、赤と黒で全く色の違う(A)と(C)同じマグマ(島前火山)から産まれたもので、垂直に伸びる白色の(B)はそれらとは別のマグマから産まれたものだったのです。

例えるなら、血の繋がった(A)(C)兄弟に完全によその子の(B)が割って入ってきている様子とでも言えましょうか。

では(A)と(C)を分ける違いは何なのか。そのキーワードは「酸化」です。酸化とは、ある物質と酸素が反応して別の物質になることです。(厳密な定義はここでは避けます、理系のみなさん大目に見てね)

冷えて固まると玄武岩になるマグマの中にはもともと鉄分が多く含まれていて、その鉄と酸素が一定の条件下で反応し結びつくと酸化鉄に変わります。

この酸化鉄の色が(A)の赤色というわけです。錆(サビ)も酸化の一種なので、鉄錆の赤味を思い起こすとイメージし易いかもしれません。

一方、(C)の黒色は酸化を起こさず素直に(?)冷えて固まった一般的な玄武岩の色ということになります。

赤と黒のちがいは何?

なぜ酸化するものとしないものがあるのか。それは(A)の成り立ちが、「しぶき状」に噴出したマグマという特殊な状況であったと考えられているから。「しぶき状」或いは「霧状」であれば酸素(を含んだ大気)と触れる表面積が圧倒的に大きくなり、受け取る酸素の量は増大し冷却されるスピードは早くなる。しぶき状であることによって、噴出してから地表に降り注ぐ一瞬の間に、マグマ内の鉄分が酸化鉄に変化する酸化を完結することができました。そして、島前火山の活動期間を通じて、断続的に相当数の回数の噴火を繰り返したため、その回数分だけ縞模様を織りなすこととなったのです。

一方(C)を形成した時の噴火はしぶき状には噴出せず、おとなしくドロドロと液状に流れ出る溶岩だったのでしょう(おそらく)。その結果顕著な酸化鉄は現れず、玄武岩として一般的な黒色系になりました。

こうした(A)(C)それぞれのタイプの島前火山の噴火活動が完了した後、最後に割って入ってきた(貫入した)別のマグマが(B)ということです。(B)の白色は酸化などの化学的な作用のためではなく、そもそものマグマの種類が違うことによって対比されることになりました。


…いかがだったでしょうか

また今回も無駄にマニアックに語ってしまいましたが、最後までついて来てくださった方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?(笑)

冒頭で隠岐島前の成り立ちについておさらいしましたが、これに沿って赤壁についての最後のまとめをさせて頂くと、

①    約640万年前~560万年前
島前火山の玄武岩質マグマの噴火により赤壁の(A)(C)が形成。しぶき状に噴出した時/ところは(A)になり、それ以外は(C)になった。

②    または③ 約500万年前 ※
島前火山とは別の、粗面岩質のマグマの活動により、(A)(C)に貫入する形で(B)の岩脈が形成。 ※(B)の年代について確定的な研究資料が見当たりませんでした。

③    ~現在
波風に削り取られること(海食や風化)によって、まるでホールのミルクレープをスプーンでえぐり取ったかのように、(A)(B)(C)の特殊な岩盤の断面が赤壁という形で露出した。

こんなところになります!

最後に

またまた理屈っぽく赤壁の成り立ちについて深掘ってきましたが、もし実際に実物を目の前にされればきっと言葉は要らなくなります。まだ訪れられたことが無い方はぜひ、来て・見て・感じていただけたらなあと思います。赤壁までの道中では牛さん(遭遇率ほぼ100%)とタヌキさん(体感4割)たちもきっとお出迎えしてくれますよ。

今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。まぎーがお送りいたしました。

参考
 ・『隠岐諸島,島前火山の始まりと活動期間』
 ・「隠岐ユネスコ世界ジオパーク」
 ・『新修 知夫村誌』