抜港上等!? 離島ならではの海上アクセス事情とは?
2022/10/31
ちぶり島公式noteをお読みいただきありがとうございます!今回はまぎーが担当します。
本記事投稿からさかのぼること約1か月、シルバーウイークの中、九州と本州の日本海側を中心に猛威をふるった台風14号が訪れました。
歴史に名を遺す「伊勢湾台風」と比較される報道や、相次ぐ特別警報の発表に、戦々恐々とされた方も多かったと思いますし、実際に甚大な被害に直面された方々もいらっしゃるでしょう。幸いなことに知夫村では深刻な被害はありませんでしたが、直撃コース上にあり、個人的には、都会出身者として離島で初めて経験する猛烈な台風であったので、機会があればその体験もシェアさせて頂ければと思います。
離島・知夫特有の交通アクセス事情により、普段から本土との行き来では神経を使う面がありましたが、とくに数日間に渡って海が荒れる可能性が高い(=数日間本当に孤島になる)台風の際に、よりシビアに考えさせられました。
というわけで今回のお題は離島・知夫のアクセス事情についてです!
島前、とくに知夫来居港のアクセス事情
台風直撃の前日、私は本土に居ました。当時14号は九州に位置し、移動速度の遅さもあってか、中国地方の海上はまだ穏やかでした。しかし、私は予定を半日以上繰り上げて知夫に戻ることに決めました。なぜなら、一度海が荒れだすと、知夫の来居港(くりいこう)に上陸することが事実上不可能になるからです。
知夫村を含む島前(どうぜん)地域には空港が無いため、アクセスは海からのみとなり、その手段としては(チャーター船を除き)、
【本土~島前】
・高速船「レインボージェット」
・フェリー
【島前~知夫来居港】
・内航船「いそかぜ」「どうぜん」
上記に限られます。
高速船レインボージェット
高速船は所要時間や時刻表的に(早朝便や夕方便があり)便利なのですが、この中で最も時化(しけ、海上の荒れ)に弱く、一番早く欠航が決まります。そして何より、知夫への直行便がありません。
フェリー
一方フェリーは高速船と比較して時化には強いですが、台風レベルではもちろん欠航しますし、すべての便が知夫を経由する訳ではありません。むしろ、本土→知夫と知夫→本土でそれぞれ一本ずづのみの運航のため、乗り継ぎを検討しなければ自ずと乗るフェリーの選択肢は一つに決まってしまいます。
内航船いそかぜ
そのため、内航船「いそかぜ」を利用して高速船やフェリーの別便に乗ります。この内航船はいわば島前の3島を巡る山手線のようなもので(首都圏の方だけに伝わる例えですみません)、およそ1時間に1本のダイヤで他の島に渡ることができます。そして基本的には、フェリーの接続を待たずして完全に欠航することはありません。
したがって、高速船が欠航してもフェリーさえ動いていれば何とか帰島できる計算になりますが、ここに最後の落とし穴があります。それが何かと言えば・・・「抜港(ばっこう)」です。
抜港
抜港とは、船が入港を予定していた港を飛ばしてしまうこと。知夫の来居港は島前3島の中で最も湾内が荒れやすく、他の2港に先んじて抜港が決まることもままあるのです。ケースによっては、知夫行きのフェリー乗船中に抜港が決まることも。乗れたからと言って絶対安心では無いのです。(ちなみに、そういう場合は村民専用のお助けチャーター船の手配があるそう、心強い…)
“かもしれないスケジューリング”
そんなわけで、本土との行き来の際に海が荒れるとなれば、
高速船が止まるかも…?
フェリーが止まるかも…?
内航船が止まるかも…?
抜港されるかも…?
・・・といった「かもしれないスケジューリング」が不安とともに発動し、大幅にマージンをとって予定を前倒しして移動のタイミングを早めるか、潔く欠航や抜港のリスクをありのまま受け入れるか、選択を迫られることになり、台風前夜の私は前者を採ったというわけです。
(ちなみに、経験を積んでいくと雨雲レーダーや風・波予報から欠航・抜港を予測する精度が上がり、よりギリギリを攻めれるようになります…!)
最後に
台風直撃を前に安全策を採り、乗るフェリーの便を早めた私ですが、結果的にその選択が功を奏しました。元々乗る予定だったフェリーは欠航し、台風による海上時化によってその欠航は数日間続きました。1本の違いが数日間の違いを生んだのです。
島民目線だけでなく、観光客目線でも、ビジネス客目線でも、大きなリスクと予測不可能性を孕んだ知夫へのアクセス。
でも、だからこそ、それとともに生きる人たちや、それを呑んでなお訪れてくれる方たちのおおらかさこそが、知夫の肩ひじ張らない空気を醸成している大切な要素の一つであるようにも思えるのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!