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知夫里島の水産業紹介シリーズ③ヨコワ養殖の話

こんにちは。最近の知夫里島は晴天が続き、爽やかな風が吹いて春の訪れを感じています。ワカメや岩牡蠣のシーズンが始まり、漁師さんたちも忙しくなってきました。

そんなもうすぐ春というのに、今回の話題はなぜか昨年の秋(10月~12月)のヨコワ漁について。ずいぶん時間が経ってしまいましたが、水産部長として!体験した島の漁業について書き残しておこうと思います。

ヨコワとは

ヨコワという魚の名前を聞いたことがない人もいるかもしれません。日本人が大好きなクロマグロ(別名:本マグロ)の幼魚の呼び名です。クロマグロは資源保護のため、獲ってもいい量や大きさなどの規制が厳格に決められています。

※ ぼうずコンニャクより引用

知夫では毎年10月からヨコワを狙い始め、活魚(生きたままの状態)で持ち帰って養殖業者に渡しています。養殖業者はそれらを一時的に知夫の生け簀で生かしておき、魚の数がまとまると南の島へ運び、さらに大きく育てて出荷します。

ヨコワ漁師の一日

漁師さんたちの朝はとても早く、日が昇る前にお弁当を持って出発します。

漁法は一本釣り。釣る道具は一工夫してあり、魚がかかると目印が光ってすぐにわかるようになっていました。ベテラン漁師さんは軽々と重たい竿を持ち上げます。簡単そうに見えたのですが、船に乗せてもらったとき私もやってみたら、全然力が足りず竿を上げられませんでした。

ヨコワ漁が始まる前に船の整備を念入りに


針を外すときは魚体が傷つかないよう素早く慎重に。素手で触ってしまうと魚がやけどして色が変わってしまうくらいヨコワは繊細な魚です。

ヨコワに限らずですが、日によってどこで魚が獲れるかわかりません。大漁の日もあれば燃料代にもならないなんて日も。

獲れるときは獲れるだけ獲ればいいというわけにもいかず、船の生け簀と魚の大きさによって、1航海で獲る量を調整しなければなりません。生け簀に多く入れすぎると酸欠になり、魚が弱ってしまうことがあるからです。

この穴に魚を放り込むとパイプを流れて生け簀にたどり着きます

魚を受け渡す時間が決まっているため、3時のおやつくらいには港へ戻ってきます。ヨコワの漁期中は漁師さんたちも早寝なので飲み会は少なめかも?

養殖業者の仕事は何をする?

生け簀の確認

養殖業者の仕事は毎朝、魚の健康チェックから始まります。ウェットスーツに酸素ボンベを背負って、生け簀の中をぐるりと潜るのです。魚の泳ぐ動きを観察し、死んでしまった魚は回収して死因分析をしていました。

ずらりとならぶヨコワの生け簀


エサやり

餌はイワシをあげます。生け簀に入れられたばかりのときはあまり餌に反応しませんが、慣れてくると海面を飛び跳ねるほどに食いつきます。日が経つにつれて餌の量もだんだん増え、餌を運ぶ船が沈んでしまわないかハラハラしました。

このイワシが臭いんですよね~


魚の受け取り

漁師さんが漁から戻ってくると、網ですくって船の生け簀から海の生け簀へ放ります。このとき魚の選別が重要で、擦れていたり弱っていたりする魚ははじく必要があります。状態が良くない魚を受け取っても生け簀の中で長くは生きられないからです。

泳いでいる魚をすくうのはけっこう難しいです


時には暇な時間も

漁師さんの船が来るのを待つ間は、生け簀付近で釣りをしたりしていました。ヨコワの餌をつまみ食いしている周辺の魚はよく肥えているのです。アジ、タイ、ウマヅラハギ、ハマチが釣れたことも。その日の晩御飯が潤うので嬉しいひと時でした。

カモメが餌を狙ってやってきます


過酷な出荷の日

魚の数がまとまると、県外からやって来た大きな活魚船で南の暖かい海へヨコワを輸送します。養殖の仕事の中で、最も重要で最も大変な作業です。

文字で説明するのが難しいのですが、網を少しずつ狭めながら活魚船の中へ追い込むのです。出荷の日は朝6時半から夕方16時までほぼ休憩は無し。合間にパンとコーヒーを流し込むだけで、疲労困憊な一日でした。

最後は生け簀の片付け

漁師さんから受け取ったヨコワをすべて輸送したら、生け簀の網を引き揚げ、陸でたたんでしまいます。網は重いし、汚れているし、臭い!9つもある生け簀の片付けを終えると、長いようで短い3か月が終わりほっとしました。

ヨコワ養殖を手伝ってみて

ここまで読んでみると過酷な重労働に思えますね~。でもデスクワークが非常に苦手な私には、青空のもとで体を動かして働くことは全然辛くありませんでした。やってみんか?と仕事を紹介してくれた漁協職員さんに感謝です。

漁師さんともたくさん話す機会があり、楽しんで仕事をしていました。ロープワークを覚え、重いものを持つことも平気になりました。そして何より体を動かした日に飲むビールはめっちゃ美味い!!

よく漁師さんたちの晩ご飯に呼ばれてました


小さな島の主要産業

ヨコワ漁は値段が安定しているため、知夫の漁師さんにとって大事な収入源のひとつです。シーズン中の漁師さんたちは大変ながらも毎日とてもワクワクしているように見えました。漁師さん同士協力しながら、これからも永く続いてほしいと思います。

また、それによって私たち一般消費者も、美味しいマグロを食べ続けられる未来に繋がることを願っています。


おまけ
ヨコワ漁のとき、ヨコワを追っかけてくるシイラがおまけで獲れることがしばしばあります。ハワイではマヒマヒと呼ばれ高級魚として有名ですが、日本では地域によって好みが分かれ、雑魚として扱う地域も。

知夫でも食べる食べないは人それぞれ。ある漁師さんが作ってくれたシイラのフライが絶品でした☆☆☆ふわっとしつつも食べ応えのあるジューシーさ、これが未利用魚なんてもったいない!


ご精読ありがとうございました。以上、山ちゃんでした。


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