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「エーゲ海の永遠の憧れ? サントリーニ島と隠岐島前」

2022/7/22

こんにちは。今週の担当はまぎーです。みなさん、ちぶり島公式noteを読んで頂きありがとうございます!

前回の担当記事に続き、とある異国とちぶり島(というより今回は隠岐島前全体)の共通点についての記事をお送りしたいと思います。(わりと有名なトピックなので、隠岐・ジオ関係の方はどうぞご笑覧ください…)

お題はこちら!

「エーゲ海の永遠の憧れ? サントリーニ島と隠岐島前」

それでは、しばし世界的なリゾート地へとご案内しましょう。


サントリーニ島とは

ギリシャの首都アテネから南東約250kmの洋上に浮かぶ、観光地・リゾート地として世界的に有名な群島で、その名前は5つの群島(サントリーニ島(別名:ティラ)、アスプロニシ島、ティラシア島、ネア・カメニ島、パレア・カメニ島)の総称としても使われます。

サントリーニ(群)島の基本データは、

総面積 約90km²弱  (隠岐島前:約100㎢) ←ほぼ同じ!
人口  約1万4千人 (隠岐島前:約5700人) ←人口密度は3倍

コロナ禍前の2019年まででは、オーバーツーリズムが問題になるほどの盛況を誇った観光の島で、2017年には年間550万人が来島したそう
(参照:『外国人客3200万人、ギリシャ観光が好調の理由』

ちなみに島前全体でも年間観光客の受け入れはおよそ18~20万人ですから、その観光業としてのスケールがお分かりになるかと思います。
(参照:『平成29年島根県観光動態調査』

では、それほど

世界中の観光客を惹き付ける魅力はどこにあるのか

簡単に写真を使って紹介すると、
その1 一面の白壁と差し色の青が印象的な街並み

https://www.santorini.gr/santorini/media/photos/

その2 世界的に名高い夕陽

https://www.santorini.gr/santorini/media/photos/

その3 たおやかな内海を優雅にクルージング

https://www.santorini.gr/santorini/media/photos/

その4 ハネムーン、ウェディングスポットとしても

https://www.santorini.gr/santorini/media/photos/

いや~、写真を眺めてるだけで行きたくなりますね~
本当に想像の中の景色のようです。

まあ、行ったことのない人間の解説を聞いてもつまらないと思うので、興味が湧いたら、せっかくなので  #サントリーニ  で実際に訪れた方々の記事も漁ってみて下さいね。


ところで

なんでちぶり島の公式noteがまるで外国の宣伝みたいなことしてるんでしょう?

ゆるいから…? 

…うん、ゆる~いです、実際(笑)

こんなに野放しにされて良いんでしょうか?

……冗談はさておき、ここから今回の本題に入っていきます。

(以後わりとマニアックな話になります。あしからず。)


サントリーニ島の成り立ち

こちらをご覧ください

現地の自治体公式観光案内サイト(日本語非対応)のPC版トップページです。
赤で囲んだように、サントリーニ島は(volcanic island =)火山島なんです。

より詳しく説明すると、サントリーニ島として海面上に露出している部分は、サントリーニ・カルデラという、巨大なカルデラを持つ海底火山外輪山に当たります。

そして、中央の二つの島(ネア・カメニ島、パレア・カメニ島)は中央火口丘にあたり、今なお活動する活火山でもあります。

(ちなみに、サントリーニ・カルデラをつくった最後の噴火(ミノア噴火)は世界史上でも最大規模の噴火とされていて、海に沈んだ幻の大陸、アトランティス伝説の元ネタと推理する歴史家も多かったそう)

さて、さらっとカルデラや外輪山なんて言葉を使いましたが、うんざりされてないでしょうか…

一応、用語の意味も引用させて頂くと、

カルデラとは、
「火山活動によって火山体に生じた凹地。噴火時にできた火口とは区別され,火口よりも大きい。スペイン語で大鍋の意味。内側は急崖で,外側は緩斜面からなる。」
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「カルデラ」より

外輪山とは、
「二重またはそれ以上の複合火山の、外側の火口縁。また、カルデラの縁にあたる山。」
デジタル大辞典「外輪山」より

中央火口丘とは、
「大きな火口やカルデラの内側に、後から生成された比較的小規模の火山をいう(外側の山は外輪山)」
日本大百科全書(ニッポニカ)より

こんな感じです。

まとめると

サントリーニ島の成り立ちは、海底火山の活動によって洋上にカルデラが形成され、その外輪山と中央火口丘のみが海面上に姿を現している状態、ということです。

カルデラの窪地に水が溜まってできたカルデラ湖や、大部分が水没して湾になったカルデラ湾なら数多くあるけれど、ビジュアル上の話、外輪山が(火口のリング状を保って)陸地から離れて洋上にポツンと離島としてある例は意外と、いやかなり珍しいようです。なぜなら、その景観が成立するハードルが高いから。

まず、カルデラをつくる火山が陸地から離れた海底火山でなければカルデラ湖①やカルデラ湾②になるし、その条件をクリアしても、カルデラに対して海面が奇跡的にちょうどいい水位でなければ、カルデラ全体が露出した離島③や、一見外輪山とはわからない離島④になります。
(①の例:芦ノ湖 ②の例:錦江湾 ③の例:青ヶ島 ④の例:硫黄島

もちろん、どの景観にも、そこにしかない珍しさや美しさや営みがあり、優劣を価値判断する意図はありません…!

ただ、ここまで取り上げてきたサントリーニ島と同じような成り立ちと景観を持つ離島が、世界中にもう1箇所だけあるとしたらどうでしょう?

…いよいよ回りくどいですね、そう、もちろん隠岐島前(どうぜん)です!

国土地理院ページより作成

隠岐島前の成り立ち

知夫 赤ハゲ山展望台より 島前カルデラ内海と焼火山を望む

どうにも記事が間延びしてきたので、ここからは駆け足で。

約640万年前~560万年前:海底火山(島前火山)の断続的な噴火活動により、それまで浅い海中にあった火山が海面上まで成長。

約560万年前~540万年前:陥没によって島前カルデラが形成され、外輪山の内側から新しい火山(中央火口丘)として焼火山が誕生。

~現在:焼火山の他にも、その周辺で中小規模のいくつもの火山が活動した後に、やがて全体の火山活動が停止し、風化、海食、海進(海面上昇)を受けて現在の姿に。

まとめると

隠岐島前を構成する中ノ島(海士町)、西ノ島(西ノ島町)、知夫里島(知夫村)の大部分は島前カルデラの外輪山で、西ノ島のうち焼火山(を含む半島状の地形)は中央火口丘にあたります。

はい。さっき出てきたようなワードばかりですね。
最後に簡単な比較表を載せておきます。


これが一番見せたかった…

くどくどと長文で両者の共通点を説明してきたこの記事。
その執筆エネルギーの源は、島に来て間もない頃、ジオ専門家のガイドさんのフィールドワークでサントリーニ島との関連を教えて頂き、冒頭の衛星写真を見せられた時に、

うわ、めっっちゃ似てる!!!

と思ったこと。
何が似てるって、上から見た地形です。

隠岐島前はこれで、

国土地理院ページより作成

サントリーニ島がこれ

wikipediaより作成

(もしも中央火口丘が隆起して焼火山のような半島になっていたら…
 というifをフックに、思いっきり島前に寄せた補助線を引きましたw)

・・・いかがでしょう?


え、似てますよね?!

断じて無理やりとかじゃない、ですよね??

・・・この話が初耳だった人のうち、20人に1人くらいに刺さっていれば本望です(笑)


最後に

散々世界的な観光地にあやかった記事を書いてきましたが、ひとこと付け加えるならば、地球史的にはサントリーニ島より隠岐島前の方がはるかに先輩です!

最後の爆発的噴火は前者は約3600年前、後者は約550万年前。
500万年という圧倒的なキャリアの差が有ります(なんの)

観光地のにぎわいとしては後塵を拝していますが、ジオ的にはきっと追いつき追い越せる素材を持っているはず。

次回はそのあたりを深堀しつつ、もっと知夫里島にフォーカスした記事をお送りできればと思います(反省)。

エーゲ海より蒼い!? 知夫が世界に誇るジオ名勝 赤壁直下の海


以上、まぎーがお送りしました。
長文駄文にお付き合いいただいた方、本当にありがとうございます。
日本海のサントリーニ島(ティラシア島)へのご来島も、ぜひお待ちしております!

隠岐のジオに少し興味がある(出てきた)方は
 → 隠岐ユネスコ世界ジオパーク (公式サイト)

ジオ・地学マニアのあなたに
 → 『隠岐諸島,島前火山の始まりと活動期間』(参考1)
 → 『隠岐島前の地質』(参考2)